西村ツチカ

2018-07-24

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去年でたムック本「anan SPECIAL 自律神経が整う魔法の塗り絵」は大好きな上杉忠弘さんが線画を担当されたぬり絵本で、モノクロ画集として見て素晴らしい最高の一冊でした。自分はそして、上杉さんが載っていること以外には興味なかったのですが、この本のタイトルで「自律神経が整う」という言葉を初めて目にしました。

その時は読み飛ばし、後で何となく思い当たりました。自分はマンガを描く時にカナアミという塗り絵のように余白を埋める技法を使いますが、カナアミを無心にかけている時に心が落ち着いた経験があります。初の連載で頭がパニックの頃、手を機械的に動かしている間は頭カラッポでいられて気がまぎれたのです。「自律神経が整う」ってあれのことかも。ただ副作用として強烈な眠気と、依存しカナアミを多用してしまうため作品の幅が狭まることがあり、そもそもパニックからの現実逃避であるため仕事としてはあまり良くないと思いました。

ところで、自分はヒマさえあればデジタル作画よりもアナログ作画が優っている点は何かないかと探すことが趣味なのですが、この、アナログで描くとデジタル作画では省略されてしまう手を動かす作業によって「自律神経が整う」メリットがあるという説は、なかなか強いかもしれないと思いました。つまり、目的が原画展示ではなく粗い複製物であるマンガ制作で、ペンタッチやインクたまりやにじみまでも再現できるデジタル作画に対し、より遅くてやり直しがきかず手が汚れ原稿紛失の危険性もあるといったアナログ作画がもつ数々の短所と向き合うことはせずに、作家の健康に関するとても不確かな優位性を主張していくということです。この態度は、アナログ作画には論ずるに足る優位性など一個もないと白状するようなもので、一見すると弱そうなのですが、どうしてなかなか強いかもしれないと思うのは、マンガの世界では、スピリチュアルや狂気や意味不明さや撹乱や失敗がある程度の支持を集めそうな傾向を感じるからです。



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by tsuchika | 2018-07-24 10:19