西村ツチカ

2017-09-24

昨日、真造圭伍さんとのトークイベントは漫画について沢山話せてとても楽しかったです。来場された方からの質問タイムでSFについての話題が出て、真造さんが「『みどりの星』『トーキョーエイリアンブラザーズ』を描き終えた後に、友人からSFはもうやめろと言われて、苦手とわかったのでもう描きたくない」と言いました。その時に自分が「『トーキョ〜』の元になった短編『兄、らしく』はとても面白いから、やり方次第かと思う」と言ったところで時間いっぱいとなりました。



熱心なSFファンとはいえない自分が書くので、色々間違いがあるかもしれませんが、漫画家の立場から思ったことを書きます。
SF=サイエンス・フィクションということで、基本的に虚構が前提である中でどう上手に嘘を楽しむかが重要なジャンルということなんじゃないかと思います。
自分はコミックリュウでお世話になっていた頃、地球に隕石が近づくというストーリーの漫画のネームを提出したところ、長年SFファンである担当編集さんから荒唐無稽すぎると、こてんぱんにダメ出しをくらいました。自分は経験も浅すぎて科学知識もないためSFのセンスが全く欠けており、鬼門か・・・と懲りつつ、科学的考証にうるさいオタクたちの内輪向け競技だと思いこんでしまい、その後しばらくSFを一方的に敵視しました。
しかし「上手な嘘」とは必ずしも科学的考証には限らないと、後にわかりました。トークイベントでも話題に挙がった映画『インターステラー』は4次元空間やワームホール等を描くにあたり本物の物理学者を考証につけているそうです。ではそれで「上手な嘘」になったかというと必ずしもそうとは限らず、SFファンからは「そこの部分だけ考証がガチだけど他の部分が適当なので世界観の整合性がとれず逆にボロが出ていて、むしろ下手に説明しすぎない方が楽しめた」といった批判もあると知りました。
真造さんは『みどりの星』『トーキョーエイリアンブラザーズ』が友人からディスられたということですが(SFのセンスで勝負していない作風も真造さんの性格そのものに感じてファン目線で楽しめますが)、『トーキョ〜』の下敷きになっている『兄、らしく』という短編はどうでしょうか。夏休みの少年のもとに異星人がやってきて兄的な存在になろうとする物語です。
この短編はSF的にもとても良いです。とSF音痴の自分が言ってもまるで説得力ないとは思いますが・・・ページ数が短く、作中で主に描かれるのは小学生たちの夏休みの暮らしであってSF的描写はおまけ的であること、科学的誤謬をあげつらうのが野暮に感じられる程度にかわいく夢うつつな語り口であること、兄の役割を自覚するという現実的な状況のたとえ話として異星人という設定が機能していること、良い話でありハッピーエンドであることなどを総合して、良いSF作品になっていると思うんです。
それに、嘘をつくのが苦手な人ほど、所感を本気で伝える中で勢いあまって結果的に嘘を含んでしまった場合に発揮する説得力は人一倍強い気もするので、そこからSFと思われる良い作品が生まれる可能性も大いにありますよね。自分は真造さんの作品で『兄、らしく』が一番好きです。自分もSFを敵視する愚行は早くやめて、いつかSFさんの大きな懐に抱いてもらえるように謙虚になりたいと思った次第でした。






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by tsuchika | 2017-09-24 18:19